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ペリカン急須でホッと一息。

暮らしに寄り添う陶器、晋六窯。

めっきり寒くなり、温かいお茶でホッと一息つく時間が恋しい季節になりましたね。
日々仕事に家事に育児に…と忙しい時間を過ごす中で、食後や合間にゆっくりお茶を楽しむ時間は身も心もリラックスできる貴重な時間。ほんのつかの間でも安らぎタイムがあるだけで、また頑張ろう!と元気になれるものですよね。
近年は急須を使って茶葉からお茶を淹れる機会が減ってきているように感じますが、淹れたてのお茶の香りや温かみはペットボトルでは得ることのできない、心の落ち着きを感じさせてくれます。

そこで今回は、上質なお茶の時間を叶えてくれる素敵な急須を始めとした、生活に溶け込むたくさんの陶器を制作されている「晋六窯」さんをご紹介したいと思います。



大きな口が特長のペリカン急須。











京都市左京区・岩倉にある「晋六窯」は、昭和初期に現代表の祖父である辻晋六が京都市山科区に築窯したことが始まりでした。現在は作陶に加えて陶芸教室も開催されており、京焼の優雅さを残しながらも、日々の生活に寄り添った使いやすい陶器や洋食文化にも溶け込む新しいデザインの陶器などを数多く生み出されています。

その中でもひときわ目を引くかわいいデザインが、「ペリカン急須」。
実は晋六窯のオリジナル商品で、商標登録もされています。

卸先から「番茶に適した急須を作って欲しい」という要望を受けて作られたことが、ペリカン急須誕生のきっかけでした。
地域によって「番茶」の定義は変わってくるのですが、春に摘まれる一番茶・二番茶の次に摘まれる茶葉を「番茶」と呼んだり、煎茶用に柔らかい新芽を摘んだ後、茶樹の下の方に残っている少し大きい葉を摘んだものを「番茶」と呼んでいます。
煎茶等に比べて茶葉が大きいため、通常の急須ではお茶の出てくる穴が少なく、開いた茶葉のせいですぐに目詰まりを起こしてしまっていたのです。

お茶の通る穴が多くペリカンのように大きな口が特長のペリカン急須は、50年前の発売当初は「不格好で変な急須」として全く売れなかったそうですが、雑誌等に取り上げられるようになり一躍人気商品となりました。
今では可愛らしいそのデザインや使いやすさから、番茶用だけに限らず愛用家庭が増えていっています。










お店の3階にある工房。比叡山を真正面から眺めることのできる窓からの景色は、絶景そのもの!
定期的に開催されている陶芸教室もこの3階で行われていますので、四季折々の風景を楽しみながら陶芸に没頭することができますよ。



「使い手」の想いが作品につながる。







今回は晋六窯の代表である京谷美香さんにお話を聞かせていただくため、作家である旦那様(京谷浩臣さん)と一緒に暮らすご自宅にお邪魔させていただきました。
さすがは窯元のお家!食器棚には、様々な食器たちが所狭しとひしめき合っています。

晋六窯で制作されるものの中には、美香さんが主婦として食器を使う上で感じる「あったらいいな」がカタチになったものもたくさんあります。
ほうれん草のお浸しを盛り付けるのにちょうどいい小鉢や、納豆をパックから移し替えて食べたくなる納豆皿、鍋の時にお玉を引っ掛けて立て置けるお皿などなど。
実際に「欲しい!」と思ったものだからこそ、お客様の日常にもなじみ、使いやすい商品として幅広く人気を集めているのでしょうね。



小さい頃から陶器に触れる。



京谷家では、子供が小さい頃でもプラスチックやメラミンの食器は使わせてきませんでした。
やはり心配になるのは割ってしまうことだと思うのですが、京谷さんに言わせれば、「食器は割れるもの」なのです。割れてしまうことを覚えることで、割れないようにどう扱えばいいのかを身につけていき、自然と食器や、ひいてはモノ自体を大切に扱う習慣が身につくのだと言います。実際、2人の娘さんは今まで、食器を割ったことは一度もないのだとか。

京谷さんが嬉しかった思い出として、子供がバイト先である居酒屋の店長さんに言われた言葉があります。
「京谷さんは、家で”ちゃんとした”食事を作ってもらってきたんだね。」
これは、居酒屋で初めてまかない作りを任されたとき、その味付けや盛り付け、食器の選び方、品数、食器の扱い方などを見て店長さんが感心して言った言葉でした。
このことを嬉しそうに話す子供の笑顔を見て、京谷さん自身も、小さい頃から陶器に触れる暮らしをすることは丁寧な暮らしにつながるのだと、嬉しい気持ちになったそうです。




代表の京谷美香さんと、伝統工芸士である旦那様の京谷浩臣さん。二人三脚で晋六窯を盛り上げておられるのですから、素敵ですよね。




大きく広い注ぎ口は、急須にお湯を注ぐ際に蓋を置いておくスペースとして活用することもできます!急須の蓋って、テーブルの上に置いておくと水滴でテーブルが濡れてしまうので、意外と便利ですよね♪
写真のペリカン急須は、コーヒーにも対応できるもの。どんどん新しいアイデアやデザインも生まれていっているのですね。



永く使ってほしいから、修理は無料。



日本は昔から物を大切に何かに作り替えて使ったり、繕い使うという文化があります。
「みたて」や「金継ぎ」です。

例えば木綿の着物は柔らかくなってきたら「おむつ」にしたり、最後は雑巾として使ってきました。
京谷さんのご自宅にお邪魔した際も玄関先で「ぱんや(綿毛状の繊維)」を乾かされていましたが、これはお布団の木綿のあまりよくないものをクッションとして使用していたものなのだとか。

燃やしてしまえば一瞬で、簡単です。
しかし、人の手で作られたものは、丁寧に繰り返し使う事で永くその命を伝えられると京谷さんは言います。

陶器は人間と同じで、口(注ぎ口)・手(取っ手)首・胴・腰・耳という名称で呼び表面を肌とも表現します。人と付き合うように陶器も大切に使うと本当に良い風合いになってきます。
なので、晋六窯では、例えば急須の蓋が割れたら無料で新しいものと交換してくれます。
食器でも大量に量産品を作ることができてしまう今の時代。ひとつひとつ手作りの陶器たちは、それらの量産品に比べると高く感じてしまうかもしれません。しかし、愛着をもって永く使い続けることができるのなら、それはその価値があるのではないでしょうか。

この世に二つとない自分だけのモノ。見つけてみませんか?




ペリカン急須を作るには、まずは粘土の練りこみから始めます。練り上がる際、菊の花のような模様が出る事から、菊もみとも言うそうです。




ろくろを回しながら柄ごてを使って、胴体部分を膨らませていきます。




蓋を載せる、急須の「キイ」の部分はなめし皮(シカの皮)をあてて丁寧に仕上げていきます。








急須の茶漉し部分を、傘の骨で作った道具で穴を開けていきます。簡単に開けていかれますが、1回も失敗せずに均等な穴が開けられるのは職人技なのです・・・!






急須の口と取っ手の部分を、胴のサイズに合わせて付けていきます。これでペリカン急須の本体部分が完成です!あとは蓋を作ったり釉をつけたり焼いたりと・・・先は長いのです・・・。




いかがでしたか?
これからは紅葉の季節ですので、比叡山の紅葉を堪能しながら陶芸教室や陶器探しに訪れてみてはいかがでしょうか?

<晋六窯>
〒606-0015
京都市左京区岩倉幡枝町322
【受付時間】10:00〜17:00
定休日:土曜日、日曜日、祝日 
https://www.kyoyaki.net/

陶芸教室に関して https://www.shinroku.com/


 

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